夜の白昼夢。
一瞬、別人かと思った。目をこすって凝視。どこかで見慣れた顔だが、しかしまったくの別人という思いが一時間近く消えず。あれは何だったのか。その見慣れたしかし名指すことができない顔は、親しくはあっても隔たりがあった。路傍のひとを見ているような気分が澱になって沈んでいく。ウォードと偶然出会った直後から、その幻覚がはじまったように思う。その印象が消えてからも、ざらついた砂のような感覚が淡く残っていた。奇妙な夜だった。