もう、歳だな。
2時間前にやっとベッドからはいずり出た。シャワーを浴びる元気もなく、コーヒーとタバコで二日分の新聞と、仕事のメールをまとめ読みし、むりやり、今夜7時からの新宿での打合せに使えるネタを拾った。あいまに、炭のようになったトーストを2枚、胃に入れた。食べたというより、コーヒーで流し込んだ。10時間、熟睡したのに目覚めてみたら深海の底だった。カラダもアタマも、水のベールでおおわれたようでスローモーションフィルムの主人公の主観映像の中にいるみたいだ。もう、おれも歳だな。いままでそんなことを感じたことは一度もなかったけど。仕事をするようになって、はじめて自覚した。歳だな、という自分というものを思い描いたことがなかった。受け入れるか振り払うか。火傷するような熱いシャワーを浴びてみても、カラダの感覚は変わらず。玉手箱を開いてしまった浦島太郎は、きっとこんな気分だったのか、なんてつまらないことが浮かんで消えた。さて、これから新宿。黒テントもサーチライトもフーテンも機動隊もなく、巨大な卒塔婆のような超高層ビルと屑のような劇団四季の常設小屋と終電に合わせ消えてしまう管理され尽くした南口と青竜刀をぶらさげたアジアンマフィアとが混在するフェイクタウンで、明るい人の暮らしのあるべき明日について、真顔で語ることになる新宿ナイトへ。笑うしかないかな。