Z。彼は生きている。
風呂から上がってぼんやりとザッピングしていたら
BS2で、なんともなつかしい旋律が流れていた。

なんとコスタカブラスの《Z》じゃねーか。

その昔。
飯田橋の佳作座で神楽坂の下駄屋の娘の手を握りながら観た、あのZ。

後半からぐいぐい引き込まれ、
結末で、軍事政権がクーデータ後に禁じたモノが次々と流れ、
最後に黒バックにブルーでZと大書され、
「古代ギリシャ文字のZが意味するのは、彼は生きている…」
とスクリーンに表示された瞬間には
隣の下駄屋の娘のことをすっかり忘れていた。

ミキス・テオドラキスの音楽がしびれるような味わいで
今でもときおりよみがえることがある。
暗殺された政治家がイブ・モンタン、彼の妻がイレーネ・パパス、
渋い予審判事がジャン・ルイ・トランティニャン…
それにしても、なんつー組み合わせだろうか。
その後の《告白》も《戒厳令の夜》もつまらぬ政治映画だったが、
《Z》は、ほんとうに良かった。
後半を眺めながら、歳月を振り返る。


やがて《Z》のテーマ音楽はスバルの3作目
《名を、サグレス》に使い、
下駄屋の娘の面影は、FMのミニドラマ企画
《神楽坂ラプソディ》の粋な屋台の娘に残った。

…そんなもんだ。