どんでん
どんでん。

と言えばいいのか。目論見どおりと言うべきか。
目論見とは、ただしこの「夏」の、だが。
いろいろなスケジュールをばらし再構築し
祝杯をあげるはずだった時間が徒労に塗り替えられていった。

みぞれのような雨の東京を
西に東に走り回った。

怒りも腹立ちもなかった。
と書けば嘘になるか。

でも、ふしぎと投げ出す気にはならなかった。

いつからだったかもう忘れたが
12月までは逃げない、と決めていた。
その一点だけが、きっと支えだった。

石のように口を閉ざしたままのプロデューサーを視野から外し
無理難題に笑顔を浮かべて応え続ける若い制作マン2人だけを視野に入れ
先へ行こうじゃねか、と呟き続けていた。

それが、11日。

きょう、テレセンで5.1チャンネル用にはじまった音の仕込みを聞きながら
映像も音も、まだ世界のだれも体験したことのない試みをしているのだと
実感できた。
この実感を、せめてひとつのカタチに結べるまでは、逃げまいと、思う。

勝ちも負けもない。
行こうという気持ちが潰えるまで、やろうじゃねえか。
と、胸の底に刻んだ。墨をいれた。
墨は、イブを過ぎ、26日の宵に消える。

勢いづけに藤純子の緋牡丹博徒でも借りてこようか。
それともくそして寝るか。