資料メモ/ファインマン物理学講義より
「ファインマン物理学」第3巻『電磁気学』
/岩波書店刊からの引用集



空間と時間
物質とひかり
電気と磁気
それぞれの関係はどれも、相対論的である。

ギリシャ人が研究した多くの現象のうちに奇妙なものが二つあった。コハクの一片をこするとパピルスの小片を持ち上げられること、
マグネシア島産の変な石が鉄をひきつけること。
電気や磁気の示す現象のうちこれだけが、ギリシャ人に知られていたのはおもしろい。この現象だけが知られていたのは、電荷の驚くほど、精密なバランスによることが大きい。

ギリシャ人の、のちの科学者たちは、コハクや磁鉄鉱の効果の一面である現象をつぎつぎに発見していった。今日では化学作用や、究極には生命の現象も電磁気学によって理解できるようになろうとしていることを知っている。

人類の歴史という長い眼から、たとえば、今から一万年後の世界から眺めたら、19世紀の一番顕著な事件が、マクスウェルによる電磁気法則の発見であったと判断されることは、ほとんど間違いない。


電磁場の相対性

歴史的にいうと、相対性原理はマクスウェルの方程式の後に発見された。事実、電気と磁気の研究がついに、アインシュタインの相対論の発見へと導いた。


電気と磁気の密接な関係

1820年の電気と磁気の間の密接な関係の発見はひじょうにめざましいものであった。このときまでは、二つの現象は全然無関係と思われていたのだ。最初の発見は針金に流れる電流が磁場をつくることであり、同じ年のうちに電流を運ぶ針金が磁場から力を受けることが、発見された。


モーター
力の存在の発見に伴っておこる大きな期待の一つは、それを原動機に利用して仕事させる可能性である。上にのべた発見後、間髪を入れず、電流の流れている針金に作用する力を利用した電動機(モーター)の設計がはじまった。


磁場と電場 《旅は道づれ》
電流が磁場をつくることがわかると、すぐに人々は、ひょっとすると、磁石も電場をつくるのではないかと考えた。いろいろの実験が試みられた。

たとえば、2本の針金を平行におき、一方の針金に電流を通すと、他方の針金に電流が流れないかと、期待された。《旅は道づれ》のような原理に従って、磁場が第2の針金内の電子をつれていくようにならないか、という考え方である。
利用可能な最大の電流を流し、電流が流れれば、感知できる、最も敏感な検流計を使用しても、結果は否定的であった。大きな磁石を針金の近くにおいても、何の効果もなかった。

ファラデーの誘導作用
やっと、1840年にファラデーが、それまで見落とされていた本質的な要因を発見した。それは、「変化するものがある」ときに限って、電気的作用が存在することである。一対の針金のどちらかの電流が 「変化する」と、別のほうに電流が誘起されるし、ある電気回路の近くで磁石が「動く」 と電流がおこる。このとき、電流が 「誘導される」 という。これが、ファラデーがみつけた、誘導作用である。

低温や超伝導の全領域がやがて、電力輸送の問題に応用されることはありそうである。

誘導法則を発見したときに、突然われわれの理論が、巨大な実用上の発展と結ばれたことをよく認識すべきである。 

マクスウェルの方程式
問題とするのは、方程式が正しいかどうかである。
そして、数えきれないほど多くの実験が、マクスウェル方程式を確かめた。かれが建設するのに使った足場をはずしても、マクスウェルの壮麗な殿堂しっかりと立っている。かれは、電気と磁気の全法則を集めて、一つの完成したうつくしい理論に仕上げたのである。