一人の男
スタジオ。地下。

渡辺はロビーのソファで横になって熟睡中。
連続20時間。
これほど集中した荒編集は初体験。
疲れているのだろが、妙に冴えてもいる。

充実感とは微妙に違う。
しかし消耗感は、ない。

とりあえず、やったとといえる所まで行けたこと。これが大きかった。

さらに一人の若いプロデューサーの存在を知ったこと。
困難をあんな涼しさとともにしのぐ男がいることを知ったことは、
あるいいは最大の収穫なのかもしれない。

まだ数回しか会っていないが
他人とは思えない親しみを感じた。

手を抜かせないやさしさ、
あの若さでどうやって身につけたのか。
類い稀なたたずまいを持った男である。

中山と夏苅がしっかりすすめてくれているので、助かっている。
このまま気を抜きながら火照りを冷ませそうだ。

とりあえず、六本木も日が暮れる。