記憶の濃度。
何年ぶりになるのか。
一昨日の夜、なつかしい顔と会った。
二人の男。
一人はすぐにわかった。玄後。
げんご、と読む。
髪が年相応にグレーになった以外は
10代の頃のままだった。
いや、その頃のエキスを見た、
そんな気がした。
もう一人は、すぐにわからなかった。
モーフィングを逆に再生しながら
やっと面影にたどりつけた。

この差異がどこから来るのか。
帰路の湾岸を飛ばしながら考えたが
わからなかった。

ひとの記憶。
ひとに記憶される自分。

濃度のようなものなのか
ひとえに物理的な差異なのか。

ふしぎな余韻の残る時間となった。


まだ4月中旬。
夜の街は八十八夜のような風が吹いている。
体が、発熱したような熱さに包まれて眠れない。