《e.》★★★★★奇妙キテレツかつ超エッジ
《e.》マット・ボーモント著/小学館刊
読了。いやなんともはや。オモシロイ。
徹底してemailだけで構成された小説。
スタイルは画期的だが、下手に真似すると火傷しそうなホットさあり。
ロンドン在住の現役コピーライター。
日本の広告屋とは根本的なところで体力が違う。
おみそれしました。




菩提樹の湯に入りヒゲを剃った。
このあいだ右側を切りすぎたので
今夜は左側を少しツメる。
鏡を見ずにてきとうにやっていたら
どんどん狂っていってあせる。
あせっている内に汗が噴きだした。
これだけあたたかい夜がつづくと
もう菩提樹ではなくハッカ系にしたくなるな。

午前二時四十分を回った。
汗、ひかず。
ヒゲものびず。

明日、いわきに行くのやめよーかな。


羽根田さんからのメールに
「そろそろ、静かな田舎でガーデニング暮らしをしたいと考えているこの頃です」
と書かれていた。

その風景を思い浮かべた。
風の匂いや光のきらめきを感じることができた。
出会ってから、もう16年は経つだろうか。
ペルシャ絨毯…
亡命イラン人たち。どろどろの甘いコーヒー。ピスタッチオ。節くれ立った手と暗い目をした絨毯の織り手たち。
そういえば三月二十一日はムスリムたちの正月だった。たしかサーレモバラックとか言っていた。そんなコピーをいくつも書いたな。

記憶の底。ペルシャ絨毯の最初のコピー。

  《人の夢。夢の美》

次のポスターのキャッチ。

  《名は、アザリ。19歳》

日本にやってきた19歳の亡命イラン人の青年、アザリ。暗い目をしていたが笑うと花のようだった。
絨毯職人は生涯に十枚も手織りを続けていると、失明することが多いと語ってくれた。
そのことをストレートにボディコピーにした記憶。
別れるときに焼き立てのピスタチオを両手いっぱい分くれた。
恥ずかしそうに笑いながら。
そして、「もう国に帰れない」と片言の英語で言った。

アザリは、いまごろどうしているのだろうか。
無事ならば35歳。男盛りである。はずだが…