月。
渡辺が撮った満月を倍速にしたものをオフィスで見ながら、目を奪われた。肉眼で眺めた月の光とはまた異なり、ゆっくりと昇っていく晦日の満月の力強さに言葉を失う。これで打ち止めと思ったが、沈みかける月の光もまたすさまじく、外で眺めているうちに、もう一回だけ撮ろう、ということになり、渡辺はオフィスに戻ってカメラを用意に。
大晦日午前4時過ぎの満月。デジタルジャパネスクをスタートさせた冬の掉尾を飾る、まことにみごとなまでの冴えた月で、サーカス団綱渡りの暮れを終わる。

悪くねえよな、良い年だった。ほんとうに。

沙羅という美しい名をもつ人が眠るベッドにも、今夜のこの月光が降り注いでいるだろうことを願う。