いちごの夢
      《それでは御免のちの世には添いましょう矢来の彼方に降る雪もある》福島泰樹



14日だった。
歌われた男が討ち入ったのか討ち入りそこねた一人だったか忘れたが、この日に限らず、昔から気になる歌ではあった。
たしか《雪は大高源吾の肩にも降った》というのもあった。
福島さんの視線は、しかしまっすぐでやさしいなと、あらためて思う。

ふと考えた。
下谷の寺の境内で、あるいは本堂で
彼にぽつりぽつりと語らせるのはどうだろう。女鬼を。

飯を食らって、これから広尾の地下スタジオへ。ことし最後の仕上げである。
体調は最悪だが、精いっぱい自分を追い込んでみたい。

義士と広告では、10億年は隔たった世界だが、花道の場所は似たようなもの。迂回して泉岳寺経由で有栖川に向かおう。


この冬、三度目のイチゴがノドの火照りを冷やしていく。イチゴ=一期。
イチゴは夢よと書けばきやははは気分だが一期は夢よと書いてしまえば表裏となった彼女達の日々が顔を出す。
ま、そんなものなのだろうな。
不憫だが。