真崎の朧月夜の君のこと
十年前になるか。三菱電機の三部作を仕上げたときに、台本最終稿のラストページに真崎の源氏物語の一コマ、桜吹雪の下で光源氏が扇をシャッ!と開く絵があり、それをコピーして添えたことがあった。

そのことを思いだし、昨夜オフィスで「仮弔封血」を探した。持ち帰って明け方読んだ。70Pにその一コマがあった。「花の宴」で光源氏が「朧月夜の君」と名付けた女と一夜を過ごしたその帰りの一コマとして、真崎は描いていた。

三部作で終わりだなとという諦観と、やるだけやったなという達成感とが、この一枚の絵を選ばせたのだと思う。

仕事の終わりは、いつもこんな気分でありたいと、ふと思いかえし、探した。いま眺めていても、いい一枚だと感じる。

これが縁だな。