ニライカナイ
正午の日陰37℃。東京炎上。
朝寝るときはしぼんでいたハイビスカスが開いていた。一輪だけ白い30cm足らずの陶器に挿しておいた。濃い緑が六葉と一輪の花。あわせても広げた掌ほどのかたまり。
西表島の夏を思いだそうと、買ったもの。
あの一歩日なたに出るとフリーズするような島の、沖に浮かんだサンゴの死骸の真っ白なバラス島に島中のハイビスカスを集めて赤と緑の寝床が一つ。満潮になる前に横たわり、最西端の灼熱に灼かれながら目をつぶる。千の夢をまどろむうちに潮が満ち島は海に消える。桜花の元にてという西行も捨てがたいが、こんな終わりも悪くない。いっそバラス島へと、22日の気の狂ったようなむじな森の暑さの中で短い間、夢想したが。目の前に心のバラス島もどきを置いて、飯も食べずに眺めていると、それも悪くなかったなとふと思う。

六時間で目覚めてしまった。
十時間は眠ろうと思ったが、胸のうちにおきた熱が体に起きろと告げたのだろう。
ユーカリをたっぷり入れた水をはったバスタブに20分身を沈めていた。

さて、午後は第三の矢にとりかかる。

湖におれのニライカナイを浮かべるために。