こけし湯の眠り男のことなど
寝る前にもう一風呂と思い、浴衣をひっかけ隣の部屋の渡辺くんを誘いに行った。
電気もテレビもつけっぱなしでうつぶせになって眠りこけていたので、足先でつついたが全然起きない。四回、頭をけとばしてやっと起きてくれた。死んでるのかと思った。階下の温泉に降りて、裸になって湯につかり5分以上たっても彼はあらわれず。
脱衣所に行くとイスに座って眠りこけている。このまま置いていこうかと考えたが、寝方があまりにも不安定で、ロダンの考える人をつくり間違えてしまったような格好だったから、耳元で「ほんばん!」と怒鳴ったら、「ふはぁーい」と目覚めた。
眠いというのでそのまま部屋につれて戻る。眠いのではなく眠っておったのだよ、と告げてもまだ「ふはあーい」と寝ぼけているようだ。飽きたので放って部屋に戻った。
暑いので窓を開けたら、川音がものすごい。増水しているのか、なんだか嵐の後のようである。眠れるかな。

死んでもラッパを話さなかったという兵隊の話は聞いたことがあるが、眠りながら温泉場まで移動して眠りながら帰ってきてそのまま眠っている、というのもなんだかすごいな。