聖空間の母と子の撮影プラン
◎聖空間の母と子



  巨大な木造の体育館のような空間。
  ただし木の質感などは感じない。

  正面奥に、大きなステンドグラスの窓が
  モノリスのように屹立している。
  ステンドグラスの色彩は虹の7色で構成され、
  回転性の透過光で各色が溶け合っている。

  モノリスより手前、上手の上辺ぎりぎりのところに天窓。
  強い光の束が、中央の空間に光の円柱をつくり出している。
  光の束は30度の傾斜。

  空間全体は薄いもやがかかり、そのもやを
  ステンドグラスごしの光が淡く色づけている。
  さらに大小とりどりのシャボン玉が空間全体を浮遊している。
  大きなものは人間を包みこむくらい、小さなものはこぶし大。

  天窓からの光の束をゆっくりと巨大な振り子のようなものが
  よぎっていく。
  光の束をよぎるとき以外はもやとシャボン玉にジャマされて
  その形はおぼろであるが、細い三日月のようにも見える。

  光の束の中では、太い蔓で出来た巨大なハンモックのようにも
  変わったカタチのベンチあるいは椅子のようにも見える。

  その「三日月」の上には一組の母と幼子。
  片側だけで結ばれた白い貫頭衣のようなものを
  ゆったりと身にまとった母と、その腕に抱かれた
  やはり淡い黄色みを帯びた布にくるまれた幼子。
  母は、幼子に歌を聞かせているか、あやしているように見える。

  おだやかな潮の満ち引きのようなリズムで「三日月」が揺れている。
  二人を祝うように、空間を水の球が踊っている。

  カメラは、ほんのかすかに、深い呼吸よりも微妙に母と幼子に向っている。
  ほとんど気づかないような距離を。