納涼 茂山狂言祭2011 茂山千之丞追善公演
今日は土曜日だけど、ほんとうは振り替え出勤の日だったのだが、私が毎年楽しみにしている京都の大蔵流狂言の茂山家の納涼狂言祭の日なので、有給でお休みにして見に行って来た。

今年は春の「春狂言」をチケットを持っていながら公演日を勘違いして行けなかったと言う大失態で凹んでしまったのと、今回の納涼茂山狂言祭が、昨年の12月に逝去された茂山千之丞さんの追善公演でもあるので、どうしても行きたかったのである。

さて、場所は大阪の大槻能楽堂であり、夏に行われる納涼茂山狂言祭は、リクエスト狂言として昨年から曲目や演者をリクエストされた中から選ばれるのが恒例となっていて、毎年意外性があったりして楽しみでもある。


「納涼茂山狂言祭2011~茂山千之丞追善公演~」


お話:丸石 やすし

昨年までは亡くなられた茂山千之丞さんがお話や解説を担当される事が多かったので、寂しさや感慨が深いね。

丸石やすしさんもお話がうまくてなかなか面白かったよ。

でも、お話が出来る人も多いのが茂山家の深みでもあるね。



○「鍋八撥」(なべやつばち)

目代:茂山七五三

羯鼓売り:茂山宗彦

浅鍋売り:茂山茂

笛:杉市和

後見 :丸石  やすし


所の目代(代官)が新しい市を開くのにさいし、一の店についたものを市の代表ににして免税すると高札を出す。

高札を見て一番乗りした鞨鼓売りは、夜明けまでまだ間があるので一眠りして待つことにした。

そこへ遅れてやって来た浅鍋売りは一番乗りの振りをして鞨鼓売りの側で同じように眠る。

目を覚ました鞨鼓売りは、側に寝ている浅鍋売りに驚き、起こして言い争いになるが、そこへ目代がやってきて仲裁をする。

しかし、双方とも自分が先に着いたと主張して譲らず、お互いに自分が一の店に相応しいと言い争いを退かない。

そこで、目代は何か勝負をして決着をつけるように命じるが・・・



この狂言は始めて見た曲であるが、鞨鼓売りと浅鍋売りが互いに譲らずに争って行くのが楽しい狂言である。

後から来てズルした浅鍋売りがだんだんと不利になり追い詰められて行くのが可笑しい。



○「金藤左衛門」(きんとうざえもん)

金藤左衛門:茂山あきら

女:茂山童司

後見:増田 浩紀


雲の上の金籐左衛門と言う山賊が、通りすがりの女を脅して持ち物の袋を奪い取る。

金籐左衛門が、袋から小袖や帯などを取り出して喜んで油断しているうちに、女が長刀を奪ってしまう。

女は逆に脅して持ち物を取り返しただけでなく、金籐左衛門の小袖まで剥ぎ取ってしまい・・・



この狂言も始めて見る曲である。

始めは恐ろし気な山賊の金藤左衛門が、相手が女だと思って油断して、長刀を取られてから主客逆転で、今度は女に威されて行く様が楽しい狂言だった。




○妖怪狂言「豆腐小僧」

作:京極夏彦 演出:茂山あきら

豆腐小僧:茂山逸平

大名:茂山千五郎

太郎冠者:茂山千三郎

次郎冠者:茂山正邦


化け物なのに臆病で人に怖がられた事がない豆腐小僧が、太郎冠者に出会い、親切な太郎冠者にいろいろと相談してる所で、太郎冠者の主人が人間なのにとても怖がられているのを羨ましく思う。

そこへ、次郎冠者を連れた主人が通りかかったので太郎冠者に勧められて豆腐小僧は脅かそうとするのだが、豆腐小僧は気が弱いのでなかなか怖がらせない。

そのうちに、主人に気づかれてしまい怖がる処か、逆にお腹が空いたので、豆腐小僧の持っている豆腐を食べたいと言い出される始末。

そうこうする内に雨が降ってきたので主人に豆腐小僧の笠と豆腐を渡すと・・・



この狂言は、京極夏彦さんが故・茂山千之丞さんのために書かれた狂言で、2002年の初演いらい茂山千之丞さんの豆腐小僧が羽目役のようになっていて、千之丞さんのイメージが強い狂言である。

この豆腐小僧も京極さんが本として出版されたり、アニメ映画になったりと話題になり、今回のリクエストでも断トツの一位だったそうだ。

そこで、千之丞さんの息子でもある茂山あきらさんが新たに台本を書き直し、豆腐小僧の役を千之丞さんの孫でもある茂山童子さんと甥っ子になる茂山逸平さんと言う若い世代のダブルキャストにして公演されることになり、私が見た今日は茂山逸平さんの豆腐小僧であった。

私は初演の茂山千之丞さんの公演を見ているので、ほぼ10年ぶりくらいで若い茂山逸平さんの豆腐小僧を見たことになる。

千之丞さんののほほんとした味は無くなったかも知れないが、茂山逸平さんの若い豆腐小僧も熱演で良かったと思う。

いろいろな意味で、茂山千之丞さんの追善公演にふさわしい曲だったように思う。


茂山家の頂点である茂山千作様も最近は御高齢もあり出演が減っているし、茂山千之丞さんも逝去され、これからの若い世代の狂言へ変わっていく時を迎えているのかも知れないね。