蝉しぐれ 
セミの合唱は、命の合唱みたいな蝉しぐれ。
夏の花も蝉しぐれも儚い命の象徴。

それゆえに凝縮された生命をしみじみと感じながら、
私は捗らない草取りの最中に聞いている。

草取りをしていた私の右腕に、鳴き声の弱い蝉が勢いよく飛んできた。
もしかして、もう目が見えなくてぶつかってきたのかと思った。

この辺りは樹木が多く山々や自然がいっぱいある。
特に朝と夕方には、ひとしきり降る雨音のように蝉の声がうるさい。

蝉は、5~7年も地中に居て日の目を見てから1週間の命と
聞いた事がある。

そんな事はお構いなしに子供達は楽しそうに蝉取りをしているが、
「蝉取りをしないで頂戴。」なんて言えない。
子供達には蝉探しは楽しいもの。

蝉に気持ちを奪われていると、早くもトンボがひらひら飛んで、
もうトンボが産まれたんだわ、と戸惑ってしまう。

今夏は、梅雨明けすると同時に気温が毎日のように真夏日、
この先1週間もずっと33度前後との予報で雨が降らなければ、
農業に携わる人が困っている。

午後7時、少し日が短くなり青空が急に暗くなれば、
蝉の声も聞こえず、隣近所のお宅も留守になり
静寂さが漂う真夏の夜になる。