お魚の会話
私の名前は「おふな」今、池に住んでいるの。
その前は、小川に住んでいたの。

僕の名前は「おたま」今、池に住んでいるんだ。
ここに来る前は隣の田んぼにいたんだ。

「おふな」と「おたま」がここにきた日は、太陽が照りつける
暑い日だった。
温い水の中でお昼寝していたら、急に水がざあーっと揺れて、
気が付いたら池の中に入っていたらしい。

「おふな」は奇麗な小川にいた方が良かったわ、
「おたま」も僕も田んぼにいた方が良かったよ、

でも奇麗な叔母さんが毎日、餌をくれるけれどパンは余り
好きじゃないんだ。お魚の粉の方が美味しいね。

優しい伯父さんが私の事を「おふな」と一緒懸命お世話してくれるの。
そうだね。優しい伯父さんは僕をとても可愛がってくれるんだよ。

「おふな」も「おたま」も奇麗な小川や広い田んぼに帰りたいと
思っている。この池に貰われてきたのだからと諦めている内に、
住み心地が良くなったのか、元気に泳いでいる。

寂しい時にふと、小川にいるお母さんや田んぼにいるお姉さんを
思い出すとお魚達は故里が恋しくなり、
この池とさようならをしたいなぁ、と言いだした。

叔母さんは内緒で「おふな」と「おたま」を小川と田んぼに帰して
あげると、鮒とおたまじゃくしは水の中へすーっと消えていった。

梅雨の雨は激しく降ったりじめじめ降ったり、
澄んだ池の中にぽつりと落ちて、私はお魚達の会話を想像し、
どんどん増えてゆく池のお魚達を見ながら微笑んだ。