早春の雨 
ざあざあと降りしきる雨音で目が覚めた。
午前5時半、いつもなら辺りが明るく見えるはずなのに

暗くてずっと眠っていたい心境だった。
両親でも居たら「おはよう!」と言葉をかけてくれたはず、

子供でも居たら「お母さん、雨だね!」と言ってくれるはず。
誰ひとり何の会話もしないまま、黙々と家事をする。

傘を差して、表通りに可燃物を出す時は雨が横殴りに降っていた。
富士も山々も灰色の空に霞んで何も見えない。

早春の雨は、優しいと思っていた。
早春の風は、暖かいと思っていた。

辛い事が有る時は、年上の主人に思い切って当たってみた。
すると以外にも、優しい言葉が返ってきた。

「悪いな、お前がいるから助かるよ!」この一言だけで十分だった。
優しさなんて滅多にない彼の言葉が例え嘘でも信じよう。

外に出れば、大粒の涙を雨が洗い流してくれ、
泣き虫な私が明るい私に戻れば、小雨になる。

早春の雨風は、時には意地悪くなったり、優しくなったりする。
田園に行けば、二羽の鴨が仲良く生きる為に餌を探している。

雨に濡れた田園には、青々とした草が長い冬を凌ぎ芽吹いてきた。