大晦日
「お爺様、お婆様、奥様、一年間、お世話になりました。
天国で仲良く暮して下さいね!」

お墓の緩やかな坂を下りると、その先には荒波が押し寄せる海がある。
海風は強く、立っているだけでも身体がふらついてしまう程、

私にぶつかってくる。冬の海は人影もまばらだが、
元日の「初日の出」を見に来る人達が結構いる。

真っ白く雪化粧した富士山が青空よりも更に青く、
美しい姿で立ちはだかり、私を優しく見つめてくれるような感じがした。

ざぶざぶと海へ流れる川の水を、そっと手ですくってみた。
手が千切れそうなくらい冷たい水。

その水のほとりには、黄色い菜の花が次々に咲きはじめて
春を思わせる感じはしたものの、風の冷たさは春まだ遠い。

あの冷たい風の中に、菜の花は我慢強くずっと春まで咲き続けて
いるのだから、私も冷たい風の中に穏やかな春を持とう。