「文七さん」
<<日本>--川越--


菓子屋横丁で露天の店を張る、文七さんの七味唐辛子店。

彼が七味を調合する時に、薬研堀の七味売りの口上と共に作ってくれる七味は、実に香りが良く、みそ汁や漬物その他何に振り掛けても風味があり美味しく、すっかり癖になってしまい、七味が切れる前に出掛けて買ってくるのが習慣となってしまった。


文七さんの、謙虚で気さくな人柄がまた素晴らしく、もう何年も前から、女房共々すっかり顔馴染みになってしまった。

彼が露店で店を張る雑貨屋が、3年前の菓子屋横丁の大火で消失してしまい、しばらくは焼け跡に朱傘を立てて。商いをしていたが、雑貨屋が見事に再建されたときに、彼の居場所も店が作ってくれて、雨風を凌ぐ素敵な露店が誕生したのである。

雨の日も風の日も、休むことなく店を張る彼の姿も、年と共に年輪が重なったが、いつまでも元気で口上付きの七味売りを続けて欲しいものである。