「視線」
<<インド>>--ヴァラナシ--


家のドアを開いて通りの様子を眺めている男性の姿。

この家の家主であろうか、監獄のようなコンクリートの家の軋むようなドアを開けて、厳しい顔を出して辺りの様子を伺っている。

たった一つ有る窓も、鉄格子が嵌まっていて家の暖かさが伝わって来ない。

家のあちこちには黒カビがはびこって、まるで遺跡のようである。

しかし家の前には古い自転車と一緒に、真新しいバイクが置いてある。

おそらくこの家の物ではないであろうこのバイクは、誰かが駐車して行った物であろう。

こんなアンバランスな光景が存在するのもインドの現実の姿である。

そうは言っても、この男性にとってこの監獄のような頑丈な家は、掛け替えの無い彼の城なのであろう。