小児癌、治療の限界・可能性、その過程 泉谷亮太著「子どもの命みつめて」
小児癌、治療の限界・可能性、その過程 泉谷亮太著「子どもの命みつめて」



 泉谷先生は1948年の生まれ.聖路加病院からアメリカでの留学を経験し、聖路加病院に復帰している.59歳の時点で30年間、200人の「子どもたいとのサヨナラ」を、見つめる.

 「治せない病との出会い」「病と闘う子どもたち」「親の悲しみと向き合う」「サヨナラの向こうに」の、4章.
 治療の入り口で「これは難しい」との感触が、好結果をもたらしたとの例もないではない.しかし、多くの子どもたちが通過しない年代で、難しい病をえて、<死>に向かう.

 「人間の力をはるかに超えるものの存在は信じて疑わない」筆者は、「ひとつの宗教に決定しきれない」と、書く(116p).
 でも、子のために「お母さんと相談してチャブレン=牧師さんに話をしてもらうことにしました」(121p)と経過を、述べる.

 「人間はいつか死ぬ存在」.
 大人ならある程度、たとえ頭のなかの言葉だけでも考える自覚.それを10歳前後の子が直面する.
 本来なら念頭にもない死を、自覚させなねばならない難題.

 小児医療の治療をこえたところにある、限界と可能性を人間味あふれる記載で、綴る..(『知るを楽しむ 人生の生き方』 日本放送出版協会 2007年6月).