特集ドラマ「生きたい たすけたい」


  特集ドラマ「生きたい たすけたい」
 ドキュメントをなぜ、一話のドラマで.
3月11日22時の75分をつかった放送「特集ドラマ 生きたい たすけたい」を、視聴しての実感である.

 2011年3月11日.
 この日の大震災、大津波、倒壊・火災.多くの人が承知している.
 犠牲と壮絶な被害が伝えられたが、その背後で多くの人が救助された市民もある.その救助=助かった-を、ささえた局面を「伝えたい」.
 ドキュメントでは描ききれない、ドラマ仕立て.作品として、見事に仕上がっているから、そこにはたいへんな努力と提案がある.

 職業女性.
 気仙沼市.軸は障害者施設の女性園長、保育所の女性所長とその家族で貫かれている.
 園長や所長は職業観にささえられた「機転」「措置」にくわえ、「人情の機微」「ヒトのつながり」「集団の心理」を駆使して、避難・忍耐・救助の待機を誘導する.

 地域・住民・コミュニティ.
 ドラマはヨコ軸に地域・住民・コミュニティのネットワークで、辛うじて危機にある避難者の窮状をまとめる.
 他方で、携帯電話・掲示板・ツイッターなどの電子情報で気仙沼、海外、東京がむすばれる.
母の被災をおもう海外居住の息子夫妻の機転が、海外-東京―気仙沼とむすんで、救助のヘリコプターが、避難先で孤立していた住民のもとへ.かくて番組広報で書かれる「奇跡」がおこる.
 その「口コミ」と「電子情報」.一見、別次元にして現代では利害をわけあうかの連絡手段が、「奇跡ともいえる被災者救援」を無事に実現できた.

 細部の再現
 ドキュメンタリーでは当事者の思い、意思伝達、支援、激励の細かな点は、到底に伝えがたい.ドラマならでの細やかな意思の交流が再現される.
 一方で、難しい局面がある.その最たる場面は、相手が<津波という水>であることだ.ドラマでは<音>で臨場感を演出し、そこを出演者の迫力ある演技力で迫真にみちた場面をつくった.
 かつて薩摩藩が受命した<宝暦治水>の映画を、アニメでみたことがある.(宝暦治水は、木曽川・長良川かの氾濫防止のため行われた)

 宝暦治水はなぜアニメの手法でなければならなかった.か.ポイントは<洪水の再現>という、<水の扱い>にあった.
 ドラマの仕上がり、出演者の演技力、脚本の筋書きにはある種の感動をおぼえた.

 演出は佐藤幹夫さん.若き日に、地元局をかけだしに、のちドラマ制作班で「坂の上の雲」などを手がけ、放送文化基金賞演出賞なども贈られている.