辻村寿三郎談「人形が教えてくれた」
 辻村寿三郎談「人形が教えてくれた」。「新八犬伝」などで知られるようになったと、申してよいのであろうか。
 我が国を代表する人形師のおひとり。

 「世間から超然としていながらも人形が作れるというのはとんでもない思いあがり」「私が現実から逃げだせば私の人形も社会的な意味を持たなくなり死んでします」(85p)と、はじまる。

 そこにいう「社会的意味」。察するに、「内面的なものをカタチとして見せよう」(133p)ということ、か。
 「彫刻は不要な部分を削って完成」「2bb行は必要な部分を付け加えて仕上げていく」(138p)とも。

 「人形師に一番必要なものはボキャブラリー」「豊富な人ほど奥深くものを見ることができます」(148p)
 「人間は裸のままでは醜いから服や着物を着て自分を飾る」「人形は、表面が素肌(略)。服や着物を着た形が、素肌でいるのと同じ」ゆえに、「いい加減な作りの人形は、作り手の素肌を見せられているようで、見ていると辛い」とも(152p)。

 人形は本来無機質であるとおもうが、しかし「人形に命を宿す」(124p)。その操りで、「命を授かったかのように、踊り、笑い、さめざめと泣く」(同)はたらきかけの、奥ゆきを示す。(日本放送出版協会 2008年)

編集 freehand2007 : 次からつぎに、「つくってみたい作品が」と申しされていました。「こんどは、ワシをつくって」と、声がきこえてくるそうで。無機質に命をあたえているようでも、ありました。
編集 ペン : 造り手の意気込みもあるとは思いますが見るほうの心持でまた表情が変わって見えますね。命を宿らせるのは人間なんだなぁっと思います^^