梁石日談「”血”の咆哮」
 梁石日談「”血”の咆哮」。1936年生まれの著者が、1980年の44歳でタクシードライバーから詩集を刊行する。

 「父と在日」、「破滅と文学」の前二章で波乱にみちた生い立ちを語る。
 聞き手が厳父を称して「自己中心的にて怪物」といわしめた父の実像をまじかにみながら、入学した定時制高校の入学式で社会人学生たちによる「学生運動の拠点」に目を開かれる(34p).

 そこから議論好き高校生、金時鐘という詩人に出会い、資本論を読んで理論武装を重ねる(35-38p)。
 「(総連にしろ日本共産党にしろ)組織というのは個性を殺すことでなりたっている」(40p)。
 
 後二章の「狂騒と再生」「闇と渾沌」から、詩人・作家の転機を語りはじめている。
 「文化を育てようとしない経済「社会」というのは長く栄えたためしがない」(68p)。
 「冷戦後、社会主義や共産主義は幻想に終わり、資本主義が勝利したとも言われるが、確実に資本主義にほころびが現れてきている現在」(72p)。
 「日本人にはアジア蔑視の傾向がまだまだ強いんですよ。欧米にばかり目を向けて、アジアとちゃんと向き合ってこなかった」(78p)。
 「(冷戦後のアメリカが)超大国として肥大していくにつれ、外部にどんどん敵を作っていくが、じつは巨大化した自分の幻影におびえている」(82p)。
 「(資本主義が行き詰まった今)一人一人の主義が世界を動かしていくようになるのかも」「一人一人のアイデンティティが基本となる社会」「人間の本質的なアイデンティティがこれからは重要になってくるように思うんですよ」(86p)。

 日本社会を見つめ、弱い者にシワ寄せされる格差を体験しながら、アジアとの摩擦是正の道を提案しているように、思えるが。(『NHK知るを楽しむ 人生の生き方』 日本放送出版協会 2008年)

編集 freehand2007 : いろいろ、ありがとうございます。「一人の人間が幸せに成れなくて」。ある時、言ってみて、支持してくださるかたがあるのかと「鬱うつ」していましたが、力づよく書きこんでくださって。
編集 ペン : 一人の人間が幸せに成れなくて国が幸せになるはずも無いとペンは思います。社会と言うも国と言うも個々の集まり・・ではないでしょうか^^