2009 08/21 23:30
Category : mental sketch modified
【糸杉】
Zypressen(独)
Cypresses(英)(複数形)
花言葉:「死・哀悼・悲嘆・絶望」..
ヒノキ科の常緑高木。
原産地は地中海東部からイラン北部。
ヨーロッパでは死の象徴とされ、庭園ほか墓地に植える。
その糸杉を題材(モチーフ)にした非凡な芸術家がふたりいる。
画家のフィンセント・ファン・ゴッホと詩人(作家)の宮沢賢治だ。
宮沢賢治
Kenji Miyazawa(1896-1933)(明治29年-大正8年)
日本 詩人 作家
フィンセント・ファン・ゴッホ
Vincent van Gogh(1853-90)
オランダ 画家 後期印象派
(敬称略)
【白樺】に掲載されたゴッホの糸杉の絵に、
宮沢賢治は強く惹かれ、非常に感銘を受けた。
このふたりの共通点は、それぞれの時代の先端へと
真っ直ぐに突き抜けるような感性を持ち合わせていた事だ。
そして、社会適合の枠の外の世界へと次第にはみ出していき、
ひたすら孤高の道を進み、それを貫き通した先駆者だと思える。
彼らをネットで検索すると‥なぜかずいぶんと類似点がある。
それはまるでこのふたりが魂の兄弟であるようにさえ僕には思える。
検索【ゴッホと宮沢賢治の共通点】
ゴッホの言葉
「糸杉のことを私はいつも考えている。
ひまわりの絵のような何かを描きたい‥。
私が糸杉を見た時、誰もまだその絵を描いていないのに驚いた。
線といい形といい、まるでエジプトのオベリスクのように美しい。
そして、その緑がなんとも特別なすばらしい色である。
糸杉は太陽が一杯の景観の中では黒い印象ではあるが、
それは最も面白い黒色のひとつであり、配色が難しい。
それは他のどんな色も考えられない…。
それは間違いなく青の世界に向かっている。
正確に言うならば、青の中で糸杉は見られなくてはならない」
「夜空の星をみているといつも夢見心地になるが、
それは地図の上で町や村を表す黒い点を見ながら、
あれこれ夢想する事に近いものなのかもしれない‥。
しかしなぜ、夜空に輝く点には
フランス地図の上の点のように
近づくことができないのかと不思議に思う…。
‥中略‥
やがて、私はこう思うようになった。
きっと僕らは死によって、星へと到達するのだと…」
宮沢賢治 詩集 【心象スケッチ 春と修羅】より
【春と修羅】
(mental sketch modified)
心象のはひいろはがねから
あけびのつるはくもにからまり
のばらのやぶや腐植の湿地
いちめんのいちめんの諂曲模様
(正午の管楽よりもしげく
琥珀のかけらがそそぐとき)
いかりのにがさまた青さ
四月の気層のひかりの底を
唾し はぎしりゆききする
おれはひとりの修羅なのだ
(風景はなみだにゆすれ)
砕ける雲の眼路をかぎり
れいろうの天の海には
聖玻璃の風が行き交ひ
ZYPRESSEN 春のいちれつ
くろぐろと光素を吸ひ
その暗い脚並からは
天山の雪の稜さへひかるのに
(かげろふの波と白い偏光)
まことのことばはうしなはれ
雲はちぎれてそらをとぶ
ああかがやきの四月の底を
はぎしり燃えてゆききする
おれはひとりの修羅なのだ
(玉髄の雲がながれて
どこで啼くその春の鳥)
日輪青くかげろへば
修羅は樹林に交響し
陥りくらむ天の椀から
黒い木の群落が延び
その枝はかなしくしげり
すべて二重の風景を
喪神の森の梢から
ひらめいてとびたつからす
(気層いよいよすみわたり
ひのきもしんと天に立つころ)
草地の黄金をすぎてくるもの
ことなくひとのかたちのもの
けらをまとひおれを見るその農夫
ほんたうにおれが見えるのか
まばゆい気圏の海のそこに
(かなしみは青々ふかく)
ZYPRESSEN しづかにゆすれ
鳥はまた青ぞらを截る
(まことのことばはここになく
修羅のなみだはつちにふる)
あたらしくそらに息つけば
ほの白く肺はちぢまり
(このからだそらのみぢんにちらばれ)
いてふのこずゑまたひかり
ZYPRESSEN いよいよ黒く
雲の火ばなは降りそそぐ
Zypressen(独)
Cypresses(英)(複数形)
花言葉:「死・哀悼・悲嘆・絶望」..
ヒノキ科の常緑高木。
原産地は地中海東部からイラン北部。
ヨーロッパでは死の象徴とされ、庭園ほか墓地に植える。
その糸杉を題材(モチーフ)にした非凡な芸術家がふたりいる。
画家のフィンセント・ファン・ゴッホと詩人(作家)の宮沢賢治だ。
宮沢賢治
Kenji Miyazawa(1896-1933)(明治29年-大正8年)
日本 詩人 作家
フィンセント・ファン・ゴッホ
Vincent van Gogh(1853-90)
オランダ 画家 後期印象派
(敬称略)
【白樺】に掲載されたゴッホの糸杉の絵に、
宮沢賢治は強く惹かれ、非常に感銘を受けた。
このふたりの共通点は、それぞれの時代の先端へと
真っ直ぐに突き抜けるような感性を持ち合わせていた事だ。
そして、社会適合の枠の外の世界へと次第にはみ出していき、
ひたすら孤高の道を進み、それを貫き通した先駆者だと思える。
彼らをネットで検索すると‥なぜかずいぶんと類似点がある。
それはまるでこのふたりが魂の兄弟であるようにさえ僕には思える。
検索【ゴッホと宮沢賢治の共通点】
ゴッホの言葉
「糸杉のことを私はいつも考えている。
ひまわりの絵のような何かを描きたい‥。
私が糸杉を見た時、誰もまだその絵を描いていないのに驚いた。
線といい形といい、まるでエジプトのオベリスクのように美しい。
そして、その緑がなんとも特別なすばらしい色である。
糸杉は太陽が一杯の景観の中では黒い印象ではあるが、
それは最も面白い黒色のひとつであり、配色が難しい。
それは他のどんな色も考えられない…。
それは間違いなく青の世界に向かっている。
正確に言うならば、青の中で糸杉は見られなくてはならない」
「夜空の星をみているといつも夢見心地になるが、
それは地図の上で町や村を表す黒い点を見ながら、
あれこれ夢想する事に近いものなのかもしれない‥。
しかしなぜ、夜空に輝く点には
フランス地図の上の点のように
近づくことができないのかと不思議に思う…。
‥中略‥
やがて、私はこう思うようになった。
きっと僕らは死によって、星へと到達するのだと…」
宮沢賢治 詩集 【心象スケッチ 春と修羅】より
【春と修羅】
(mental sketch modified)
心象のはひいろはがねから
あけびのつるはくもにからまり
のばらのやぶや腐植の湿地
いちめんのいちめんの諂曲模様
(正午の管楽よりもしげく
琥珀のかけらがそそぐとき)
いかりのにがさまた青さ
四月の気層のひかりの底を
唾し はぎしりゆききする
おれはひとりの修羅なのだ
(風景はなみだにゆすれ)
砕ける雲の眼路をかぎり
れいろうの天の海には
聖玻璃の風が行き交ひ
ZYPRESSEN 春のいちれつ
くろぐろと光素を吸ひ
その暗い脚並からは
天山の雪の稜さへひかるのに
(かげろふの波と白い偏光)
まことのことばはうしなはれ
雲はちぎれてそらをとぶ
ああかがやきの四月の底を
はぎしり燃えてゆききする
おれはひとりの修羅なのだ
(玉髄の雲がながれて
どこで啼くその春の鳥)
日輪青くかげろへば
修羅は樹林に交響し
陥りくらむ天の椀から
黒い木の群落が延び
その枝はかなしくしげり
すべて二重の風景を
喪神の森の梢から
ひらめいてとびたつからす
(気層いよいよすみわたり
ひのきもしんと天に立つころ)
草地の黄金をすぎてくるもの
ことなくひとのかたちのもの
けらをまとひおれを見るその農夫
ほんたうにおれが見えるのか
まばゆい気圏の海のそこに
(かなしみは青々ふかく)
ZYPRESSEN しづかにゆすれ
鳥はまた青ぞらを截る
(まことのことばはここになく
修羅のなみだはつちにふる)
あたらしくそらに息つけば
ほの白く肺はちぢまり
(このからだそらのみぢんにちらばれ)
いてふのこずゑまたひかり
ZYPRESSEN いよいよ黒く
雲の火ばなは降りそそぐ