「余裕のないその日暮らし」=江戸、下層民の生活 池上彰彦著「下層町人の生活」を読む210920。
  昔、一文銭の目方3.75gは重さの基準でした。
 「一文銭の目方」という意味で「文目(もんめ)」と呼ばれ「匁」と書くようになりました。
 今でも5円玉は3.75g=1匁です。

 手間取り職人、なかでも比較的収入のよいとされる大工の生活。栗原柳庵筆『文政年間漫録』記載事項。

 まず、収入の子細
 「大工の手間賃は飯米料とも一日銀五匁四分」
 1年354日として、これより「正月・節句などの物日や、風雨の激しい日には休むとしてそれが六十日ほど」、
 「残り二百九十四日の収入は銀一貫百六十七匁六分となる」。
 (銭に換算すれば、約百六十七貫文、月平均約十四貫文になる)。

 支出の概要。
 「夫婦と子供一人の飯米が三石五斗四升、この代銀が三百五十四匁」「店賃百二十匁(これで四畳半二間ぐらいの店賃である)」
 「塩・味噌・醤油・薪炭代七百匁」「道具・家具代百二十匁」「交際費に百二十匁」「合計一貫五百十四文となり残りは七十三匁六分」。

 そこで、収支の差。
 「もし子供が二人あるか、ほかに厄介がいれば、もうこれでは足りない」。
 「大工職のような者でも、手間取り職人の場合には、ほとんど余裕のないその日暮らしの生活で」
 「少しましな生活をするには、請負い仕事のできる棟梁にならなければならなかった」
 (西山松之助・竹内誠編『江戸三百年ー2 江戸っ子の生態ー』 講談社 1975年 105-06p)

 「余裕のないその日暮らし」=江戸、下層民の生活 池上彰彦著「下層町人の生活」を読む210920。