鎌田 慧著『反骨のジャーナリスト』
 鎌田 慧著『反骨のジャーナリスト』。2002年1月に日本放送出版協会から刊行された「人間大学」の放送用テキスト。新潟との往復の機内で読んだ。

 鎌田氏は「反骨のジャーナリスト」というタイトルに疑問を呈しつつも、明治以来の陸羯南、横山源之助、大杉栄、平塚らいてうら、検閲と弾圧のなかで筆を握りつづけた言論人の姿勢と行動を追う。
 現在も、報道は不偏不党、公正中立の名のもとに自己規制、ピラミッド型の校閲、記者クラブを通じて流布される情報を鵜呑みにした問題意識の不足、「反骨」を忘れたジャーナリズムに警鐘を示す。

 近代の50年において、報道が戦意高揚、軍の勝利を喧伝することに務めた一端があって、報道の戦争責任ということがいわれる。ここに登場する10人のうちの多くが、それぞれの時代において、「個の存在であった」、また「個の存在であったがゆえに、言論の統制を崩すことができなかった」と、言いたげでもある。

 他方で、現代に生きた斎藤茂男を、取り上げる。「生涯一記者」を貫いたその生涯に、≪資本主義が人と人とのつながりを希薄にしていく属性を持つ≫と紹介する。
 今日のジャーナリズムにおいて、その忘れられそうな側面と失われそうな「反骨」がなんであるかを示しているような気がした。
 ≪142ページ 出版社: 日本放送出版協会 (2002/01)  ISBN-10: 4141890634 ≫