心はあなたのもとに
村上龍の「心はあなたのもとに」文芸春秋社刊、
一ヶ月半かけて今朝、読み終わった。

一日約10ページ見当の超スローペース。
冒頭の5行で読むのをやめようと、一週間放置。

それから
ベッドで、机にむかって、スタジオで
移動中のロケバスの中で、撮影の現場で
散歩の途中のカフェで、風呂場で、トイレで…
おそるおそるすこしずつ読み進んだ。

読み手ではなく、作家自らに向けた小説。なのだと思う。
自分がなぜ村上春樹になじめないのか、理解できた。
ひりひりとした鮮烈さにコトバがみつからない。

こういう小説を日本人が書けるのだと、あらためて。
水村美苗の「本格小説」以来の、衝撃と脱力。


装丁は関口信介。余白といい堅牢さといい、
明朝の視認性を徹底追求したデザインに脱帽。
菊地信義の端正な可読性の良さを彷彿とさせた。


“I'll always be with you.always”のサブタイトルが、
身を切るように、切ない。

2011.6.9未明