ウォードの髭の感触と小雪ふる有栖川
広尾rスタジオ。小雪。ずいぶんひさしぶりにウォード セクストンと仕事をした。10年以上ぶりになるか。ラストコメントを読み終わった瞬間、アナブースのウォードが「鳥肌たった?」と聞いてきた。あのころの約束事の再現。ふと時間が逆転。まだどういうふうに「自信と納得」を身に付けていいのか見当もつかなかった頃のこと。別れ際、握手をしてるうちに二人とも感情が昂ぶったのか、気がついたら抱きあって頬を合わせていた。照れくさくあわてて身を離し目を合わせずに別れた。ざらついた無精髭の感触が残った。なんとなく生き残ったことを確認しあうような時間になった。10日前の月曜にオリエンがあり、ちょうど10日間。台本も構成案もなしで翌日スタジオに入り、目の前に200本以上の素材テープを並べてスタート。同時に英訳を依頼。ニワトリと卵の関係のような段取りで進めた仕事だが、最後に贈り物が待っていた気分。自腹で音楽をつけさせろと申し出た井口といい、ギリギリまで内容ブラッシュアップし続けた山岡といい、間にあった4日間のロケも含め一日も一瞬の停滞もなしで推移することが出来た。有栖川の空に降る雪を眺めながら吸うタバコの味も、また格別である。