ひさしぶりの夕日の町ロケはムダだった
勝算は、ほんとうはなかったのだ。
よくあれだけ撮れたなと、OK出しをしながらすこし呆れた。ライティングも録音マイクの抜き差しも、すべて走りながらやっていたような気分がある。ひさしぶりの古河らしい美しい夕焼けも日没も銀色の月も星々も冬木立も、撮ろうとする余力がまったく無かった。惜しむ気持ちさえ、無かった。にもかかわらず、充足していた。まだ、撮り続けたいという熱がラストカットにOKを出し、お疲れと言った後もくすぶりつづけていた。
茅ケ崎のロケハンをはさみ、素材に集中。パッケージのために急がされたとはいえ、はじめたらすぐに没頭できていた。丸12時間ぶっ通しで編集みすえつつ丁寧に切っていた。仮眠しDVDに焼き、コピーし夕方までには望まれた先々に届けさせた。
それから急いで虎ノ門に。終了30分前に飛び込み、挨拶だけは間に合った。リターンし、また続きに戻った。

そこに1本の電話があった。伝言された感想を耳にしながら、もうほんとうに縁を切るべきなのかなと、泡立った。それから荒編の手が止まった。止まって5時間。あきらめた。放擲。

興味が、きれいに消えていた。