なにがいきかよ
なぜか平静に時間が過ぎていく。ふいに潮時がやってきた。そういうことなのかと、思わないでもない。ひさしぶりに、のんびりとレンタルビデオを見て過ごした。二カ月余り、こんな時間に縁がなかったことに、あらためて気づく。唐突に、ぽつんと独りで泣いている顔がフラッシュしては、引き戻されることを繰り返してきた。その逡巡が消えてしまっている。感覚を思い浮かべようとしても、乾いた画布を前にしているようでリアリティがない。何枚も重ねた紗ごしの記憶を見ているようで、そのことがむしろ切ない。あざやかでないことが、辛い。ひとがいつかは消えていくように、記憶もまたうすれ、消えていってしまうのか。漆黒とも思える森の底の、あの絶望も渇望も、他人の物語を聞かされているように遠い。そのことが、信じがたい。まいった、な。

編集 mujina : 2001