No.59 [ポッポイの汽車に乗って行きませんか]
[ポッポイの汽車に乗って行きませんか]
    佐々木洋一詩集「未来ササヤンカ村」より


   ねえ
   ぼくの妹さん
   ぼくのあんまり可愛ゆすぎてむずがゆい妹さん
   ポッポイの汽車は
   汽笛をピュウポオオイ 吹き吹き
   たらっぽすかんぽ坂を越え
   とんぼとんぼぎんやんま畑を通って
   クリーナの駅でひと休みして
   ササヤンカの村に行く汽車です

   行くんです
   本当に行くんです
   今
   ササヤンカの村の住民台帳には
   ぼくの名前がポツンとひとつ
   寂しがっているんです
   ねえ
   ぼくの妹さん
   ぼくの
   あんまり可愛ゆすぎてホクロを殺したくなる妹さん
   ポッポイの汽車が発車します
   ピュウポオオイ
   ピュウポオオイ
   ぼくといっしょに行こう
   ササヤンカの村へ

   ねえ
   ぼくの妹さん
   ササヤンカの村の住民台帳に
   あなたの名前を刻めば
   あなたとぼくは夫婦
   子だくさんの夫婦になるんです
   やがて
   ササヤンカの村の住民台帳には
   たくさんの住民が登録される

   ねえ
   ぼくの妹さん
   ササヤンカの村はササヤカという村
   野菜と土と風と水車がコットン揺れている村
   あなたとぼくの子供達は
   また美しい恋人達を
   ポッポイの汽車に乗せて連れてくる
   ねえ
   ぼくの妹さん
   ぼくの
   あんまり可愛ゆすぎてつねりたい妹さん
   ポッポイの汽車は
   汽笛をピュウポオオイ 吹き吹き
   あめんぼめだかっこ川を渡り
   どんぐりどんぐりどんぶりっこ林をくぐり
   クリーナの駅でひと休みして
   ササヤンカの村へ行く汽車です
   ピュウポオオイ
   ピュウポオオイ
   ねえ
   ぼくの妹さん
   ぼくといっしょに行こう