「図南の翼」★★★★★
小野不由美著/十二国記/講談社文庫/十二国シリーズ第5部

四年前、《屍鬼》を読んであわてて渡辺にあちこちの本屋で手に入れさせた《十二国記》を、むじなの忘年会前に紀伊国屋で見かけ、なんとなく第1部の上巻だけを買った。
前はうっとおしくて読みすすめられなかった文章だけど、なぜかすいすい読み進む。すぐに世界にはまった。指輪物語とゲド戦記とエンデと金庸と北方版水滸伝を足してこねて味わったことのない香辛料で仕上げたような奇妙で凛々しくて元気の出る物語。
いや、はまった。
ひさしぶりに、はまりきった。
けっきょく晦日から今日まで、夜と昼を逆転。
途中、口直しに宮本輝の《流転の海》四巻をはさみながら
小野の十二国ワールドにどっぷりと浸った。

今朝四年前に仕入れた分をすべて読了。
その後の2冊も入手してきたので、こちらはのんびりと惜しみながら読むことにし、年末年始のクリーンオフをここまでとする。

《屍鬼》も破天荒だったが
《十二国記》はさらに突き抜けている。

こういうすぐれた物語世界がファンタジーなどという
卑小なジャンル分けでくくられてしまうことが情けなくもあるが
帯を見たらすでに530万部突破。四年前で100万部だったから、若い人の趣味は捨てたもんじゃねな、とあらためて。

こんな物語読んでりゃ、この国の行く末もそう暗くない。