スターらんどホテル
「激動の1週間」という言い回しが昔、あった。
おれが十七歳のころのこと。

比ぶべくもないが、展開だけは「激動」の1週間が過ぎた。
甲府の山奥、星とリニアの寒村で。

滞在中、一日ごとに村の秋が濃くなっていった。
昼は染みるような青空と500km/h超。
日が暮れると満天の星。夜明けは朝霧。

座ると人の形にへこんだままのベッド。
くさったような古油でで揚げられた得体のしれないフライ群。
農村なのにタイの古米のような味の飯。
二十年前のまだスターバックスもタリーズもなくひたすら薄いだけがとりえの「アメリカン」のようなホテルのコーヒー。
飯を食っていると素っ裸のガキが走り回り、
金歯を光らせたおばさんがあたりかまわぬ大声で話しまくる。

この秋の我が宿。
都留スターらんどホテル。

カタカナとひらがなの混じったトンチンカンな看板が
闇の底に浮かぶのを見ると、ほっとするようになった自分がおかしい。

まずは最初の切所は越えた。