《安政五年の大脱走》★★
五十嵐貴久著/幻冬社刊

あちこちでなかなかの評判だったので読んでみたが、ペケ。
たぶん、この倍から3倍書き込まないと成立しないのではないか。
構成がストレートすぎて、つかみが悪すぎる。
冒頭の井伊直弼青年時代の純情篇がいつのまにか、ありきたりの悪役像にかわり、ストーカーまがいの話に落ちる。
なぜ美雪姫の脱出行に五十一人のとらわれた藩士たちが全存在を賭けられるのか、
武士道一本やりではあまりに陳腐。
バルーンによる脱出成功の伏線のはりかたがアンフェア。つまりカタルシスが弱い。
せっかくの度肝抜くシーンが死んでいる。
後日談も、ペンを抑えたつもりだろうが、単なる舌足らず。
面白かったのは表紙絵と口絵のみ。だまされた。
ちかごろのミステリー系の書評はほんとうに信用ならない。