パパラギの夕
仕事の内容に合わせて、できるだけふつーの格好を、と考えた。
で、スーツを引っ張り出し、ネクタイを締めた。

外気温35℃。湿度90%
ほとんど熱帯のジャングル。
潮騒と梢のざわめきと極楽鳥の鳴き声だけが欠落した東京午後3時。

あ、あ、熱い。暑いのではなく暑い。
エアコンつけていてこの熱さに、ふだん人びとはどうやって対処しているのか。

ま、NYKの百年史によれば
彼の船の乗組員達は、ことさら服装・マナーに厳格だったという。
緊急時にサンダルをつっかけたままで上甲板に顔を出した機関員が「当船には似合わず」と下船させられたとある。
それもどうかとは思わぬでもないが、
ほほ笑ましいエピソードとも読めた。

だからしばらくの間は
そのNYK気質に応じてみようと今日のところは殊勝になった。

でも、アツイのだ。

つらいのだ。

すでに、外出する気力が消失しつつある。
カラダガ反乱を起こしそうになっている。
まいったな。

南の島の酋長ツアビが語るパパラギはきっとこんな毎日を過ごしていたのだ。
腰ミノ一枚巻いただけでそよ風にハダカをさらして
あくびまじりに奇妙キテレツなパパラギたちの生態を聞いていた
島のすこやかな若者たちはきっと退屈したことだろう。

ムリもない…