途中放棄
途中で、わからなくなった。
すんなりいくつもりで、満を持して余裕を持ったつもりでいた。
頭は冴えていた。
はずだ。

夜が明け、子供たちが登校していく笑い声が、開け放したままの窓から
真夏のような日差しといっしょになって入ってくるあたりには
もうだめだった。

つかみかけていたイメージが砂のように崩れ
キーを叩いても、すぐにディレイ。その繰り返し。
十時前、あきらめた。
できたところまでを渡辺に頼んだ。

ここまで引っ張って、カタチにできなかったのは
はじめてだった。

真夏の光の下を部屋まで歩き、
シャワーを浴びてベッドに潜り込んだ。

3時間眠り、渡辺の電話で起きた。
CGが開かないのでこれから曙橋のプロダクションで
善後策を練りたいとか。
わかったと答えて切る。

開かないのはCGのファイルではなく
おれのこのアタマなのにな、と思いはしたが
口には出せず。

たかがまとめるだけの仕事が
こんな落とし穴があるとは。


菊池さんが、コンサートの記録ビデオを喜んでくれた。
それがこの一夜の救い。