六本木ラーメン
イチローから連絡。キヤノンは博報堂に決まったと正式通知とのこと。4連敗。30分ほど電話で話す。いろいろ思いがないこともないが、お互いそのことには触れず。魂をいれた仕事の機会を与えてくれたことを感謝し、負けても悔いがまったくないことだけを伝えた。何に負けたかを、なぜ負けたかをこれから探るという話もあった。昨日までは、自分でもそのあたりが気になり、きっちり総括しておきたいとも感じていた。

熟睡したせいだろうか。

そんなことはもうどうでもいいのではないか、と思えている。ここまで行ければというラインを決めて、どこかでそのラインを越え、ずっと先まで行けたのだと感じるようになっていた。

いつの時点かわからないが、あの企画はいちど音を上げて降りてしまおうとしたときから以後は、仕事を離れてしまったのだと思う。
そこから先は、まったく別の世界だった。
この十年のエッジとなったあの夏のできごと、記憶、想いのすべてを、吐きだすための、最初の絶好のチャンスとなっていた。
おれがあれ以後、取り組んだのはひとつの企業をどう紹介していくかではなかった。
そのことを感じながら、戻れなかった。書き始めてからは一気だった。
負けてから書くのもどうかとは思うが、勝ったら仕上げは降りようと決めていた。譲れないものだけで練り上げたので、あの世界を壊されることを怖れていたから。
今になってみれば、とんだ杞憂ではあったが。

なぜどうして負けたかを探る気持ちが失せたのは、そのことに今朝気づいたから。
おれにとっての十年かけたキヤノンストーリーは、これで幕。イチローはともかく、どこかで決定的に縁がないのだと思う。

上海で円卓を囲んで祝杯を挙げるという企画は流れたので、年が明けたら六本木あたりでラーメンでも食いましょう、と約束。

気が晴れた。