オーエン博士の語り
オーエン博士の語り
●水はどこから来たのか?

今、私はハワイ島のマウナケアの山頂にいます。
ハワイ島は周囲を太平洋に囲まれていて、
一番近い陸地まで約4000キロ離れています。
そして、地球の反対側にも
同じくらい大きな海が存在しています。
そう考えると、大陸というのは、
巨大な海に浮ぶ大きな島々にすぎない
ともいえます。
また、海のほかにも、
この地球上には雲、雨、滝、川、湖など
さまざまなカタチで豊かな水が存在しています。
これらの水は、いったいどこから
やってきたのでしょう。

確かな答はまだ得られてはいませんが、
少しずつわかってきたことがあります。
私たちの地球がつくられたとき、
太陽系を形づくったガスの中に
水蒸気として存在していた水を、
地球の岩石の中に取込んだらしいということ。
しかしこの考え方は一部の説明にはなりますが、
今地球上にあるすべての海を満たすためには、
さらに多くの水が必要だったはずという
疑問を解決できません。

そこで残りの水は、
彗星群として地球にやってきたと、
考えることにしました。
彗星は大きな氷の玉であり、その中には
ロックダストや有機物質が含まれていて、
こうした物質から生命が生れてきたと
考えられます。
つまり、彗星は、水ばかりでなく、
生命の起源につながる大切な要素を
もたらしたことになります。
これらの要素と水とが結びついて、
地球に生命が誕生したわけです。

彗星は、ほかの惑星にもやってきました。
火星にも、金星にも。したがって、
これらの惑星にも水は存在しています。
しかし、今ここで私たちが他ならぬ
この地球上でこんな議論をしていられるのも、
地球が たまたま 太陽から、
水が液体の形で存続していけるような
都合の良い距離に位置しているおかげなのです。

これまでに、
50あまりの惑星が発見されています。
そのうちのいくつかは他の恒星の周りをまわっています。
肉眼では見えないものでも、
私の後ろに見えるこうした大望遠鏡のおかげで、
その存在が確認できるようになりました。
でも、地球のように豊かな水におおわれた固い地表をもつ惑星は、
まだ一つも発見されていません。
つまり、この地球こそが、豊富な液体の水と、
たくさんの生命に満ちあふれた、私たちの知る、
ただ一つの惑星であるということなのです。


●未来博のみなさんへ
福島未来博の、
水をテーマにしたパビリオンにみなさんを
お迎えできることは、私にとって大きな喜びです。
福島で水にまつわる展示・映像を展開する
というのは、とても的を射たことであると
思います。
なぜなら福島では、水のすべての形態を、
四季を通して見ることができるからです。
冬には雪が降り、春にはそれが溶けて流れだし、
川となり、雨や池や湖となり、海にいたります。
そしてその海は、
このハワイの海岸の向うに見える
太平洋そのものでもあります。
だからこの海は私たちとみなさんとを結ぶ
一つの絆であるといえるでしょう。

でも、私たちはもっと深い絆で結ばれています。
なぜなら、地球上のすべての人類は、
多くの部分が、水でできているからです。
さらに、無数の形で存在するすべての生命が、
この水という、特筆すべき物質に
全面的に依存しているからです。

私たちの水に対する関心の深さの意味を、
ご理解いただけたらと思います。
そして、これからみなさんにご覧に入れる
地球の水のはじまりと、
生命と水の関わりの歴史の物語を
お楽しみいただき、毎日の暮らしの中で、
この星で生き続けていくために不可欠な水を
守るための努力を続けていただけたらと思います。

それでは、最後にハワイスタイルのご挨拶をお送りします。
 『アロハ!』


●本編のラストメッセージ/スーパー

私たちが知ることができた惑星の中で
ただ一つ地球だけが、
たくさんの水と生命に満ちあふれています。 
この宇宙の、奇跡のような贈り物を
いっしょに守り続けましょう。
雪を、虹を、川を、滝を、
そして生命そのものを与えてくれる、
その水を。   トビー・オーエン
--