「邪魔」は★★★★1/4
「邪魔」奥田英朗著/講談社刊を読む。
去年の『最悪』ではまだ萌芽だけだった奥田の異才、ここにみごとに開花。
なんともすさまじい「現実逃避」の集大成である。桐野夏生の『OUT』と比較した書評があったが、奥田の根底にはひたむきな肯定があることで、桐野のおぞましさからは遠く離れた作品となっている。

九野の孤独地獄に比べ、恭子の陥った孤独の浅さがやや気になるが、しかしそれは瑕瑾に過ぎない。
九野がつくりだした、あるいは逃げ込んだ迷宮は静かな哀しみに満ちていて、小説家だけが描き出せる、人間の希望でもある。

春の傑作である。しかし《邪魔》とは、ね。