ひぐらしとカワセミ
今度のロケで印象に残ったのが、ひぐらしとカワセミの声。
ひぐらしはもっと夏が深まってからと記憶していたが、
ロケの間中、ずっと耳について離れなかった。
ひぐらしの声はどうしてあんなに澄んでいて、すこしもの哀しく
聞こえるのだろう。
そしてカワセミ。
藤八の滝と名付けられた谷地で撮影しているときに聞こえた
カワセミのさえずりは、どんな楽器でも再現できないなと思うほど
複雑で素朴で繊細な音色だった。
かなりの音量の滝の音にも関わらず、周囲の空気を切り裂くように
カワセミの声が、他のすべての音を消した。

あんな瞬間は、
どんな音楽も無力だな。
かなしくなるほど無力だな。