「東京アンダーワールド」は情けない
ロバート・ホワイティング「東京アンダーワールド」角川書店

「菊とバット」「和をもって日本となす」のホワイティングが六本木の噂に名高いあのニコラスの経営者の暗黒世界を描き、アメリカでは「タクシードライバー」のマーティン・スコセッシが映画化するという前評判と、平積みされたそのちょっとノワールな風情の装丁にだまされた。
つまらん。ほんとにつまらねえ。
一段組300ページ余りとという本文の少なさに不安はあったものの
まさか ホワイティングだものとなだめつつ読み進み最後まで。
10年に1冊なんだからもう少し掘り下げることはできなかったのか。

つまらん街にはなったけど、アンダーワールドは同時にワンダーランドでもあったのに、東京で育てば、こんな下駄屋の小僧でももう少し込み入った裏を知っている話を、妙なライト加減ですかすか書き飛ばしてくれて、あきれたもんだ。

六本木も赤坂も、もうすこし裏も表も陰影があったよ。
いりくんでいたよ。
ここに出でくる「ガイジン」は、ホワイティングが一番嫌いなはずの、日本人が描く「ガイジン」像すぎて、ほんと古い東映そのものだ。ヤクザたちもみんな類型的でしまらない。

装丁と看板にやられた。
その意味ではたしかに「アンダーワールド」ではあったけど。