新選組悲話
新選組悲話・佐々木愛次郎

新選組の隊士の中で、美男五人衆の一人とされた佐々木愛次郎と言う隊士がいました。

大阪の出身で顔も身体も色白でしたが筋肉は引き締まって、動きは素早く剣の腕も立ち、新選組隊士の中でも美男剣士と噂されてたそうです。

性格も良くて機転も利く方だったそうです、愛次郎と言う名前も良いですね。

その佐々木愛次郎が、ふとした事から八百屋の娘のあぐりと言う娘と知り合って、お互いの思い合う仲になりました。

佐々木愛次郎19才、あぐり17才、美男美女の爽やかな恋人同士でした。


しかし、ある夜に二人が河原を散歩しているときに、酔っ払ってお供や芸者を連れた新選組の芹沢鴨と出会ってしまったのです。

芹沢は、あぐりをジロジロと眺めると話しかけて来ましたが、そこは愛次郎が間に入り、何とかあぐりを庇ったのでした。

芹沢は、愛次郎に明日の朝に話があるから部屋へ顔を出すように言いつけると去っていきました。


芹沢のお気に入りに佐伯亦三郎と言う隊士がいました。

翌朝に愛次郎が芹沢の部屋へ行くと、佐伯が待っていて、芹沢があぐりを気に入ったので妾に差し出すように親元へ話に行くと言いました。

部屋でも、芹沢からあぐりを妾にするからそのつもりでいろと言われてしまいました。

愛次郎は胸が張り裂けそうでどうしようもなく、あぐりの元へ行きたくても隊務があるので行く事も出来ずに、辛い思いで泣きたい気分でした。

佐伯は、あぐりの親元へ交渉に行きましたが、愛次郎とあぐりの事は親も認めた仲で、親も愛次郎を気に入っていたので、芹沢の申し出を断りました。

実は、佐伯もあぐりの事を何とか自分の物にしたいと横恋慕していたのでした。

そこで、一旦は引き下がると、愛次郎に

「芹沢に見込まれたからにはどうにもならない。このままあぐりを連れて駆け落ちするのが一番良い」とそそのかしました。

あぐりへの思いでいっぱいの愛次郎は佐伯の話を真に受けて感謝するのでした。

愛次郎は、あぐりの親にも事情を話し、了解を得たうえで二人で夜中に駆け落ちをしました。

しかし、これは佐伯の罠だったのです。

佐伯は数人の仲間と愛次郎が脱走するとして竹やぶで待ち伏せしていたのです。

あぐりを気遣いながら竹やぶを通る二人を、待ち伏せしていた佐伯らが襲い掛かりました。

不意を突かれた愛次郎は剣を抜く間もなく、あちこちを切り裂かれて殺されました。

佐伯は、あぐりを無理やり竹やぶの奥に連れ込むと自分の物にしてしまったのです。

あぐりは佐伯と争っている中で、愛次郎の後を追って舌を噛んで死んだそうです。

斬り殺された愛次郎と舌を噛んだあぐりの遺体は翌朝に見つかり、心中らしいと言う話が流れたそうです。

佐伯は、自分が手を付けてから芹沢の妾に差し出そうとしていたが、愛次郎が脱走したので成敗したとしたと説明したそうです。

その後、愛次郎とあぐりが亡くなった竹やぶで、佐伯も切り殺されているのが見つかりました。

いろいろな噂も出ましたが、どうやら佐伯がやった真相が芹沢にばれて怒りを買って殺されたとも言われています。

佐々木愛次郎はまだ19歳で、あぐりは17歳だったそうです。

新選組の中で散った悲劇として多くの人の悲しみを誘う話として流されています。

この、佐々木愛次郎の墓はどこだろうと調べてみたのですが、新選組隊士の墓地にも無くて判りませんでした。

どこかで、二人で誰にもじゃまされずに眠っていてほしいです。