除夜の雪
今日は大晦日ですね。

大晦日というと思い出す落語があります。

「除夜の雪」と言う落語ですが、関西だけでなく日本の落語界の名人でもある桂米朝師匠の話をテープとDVDで持っています。

しっとりとした哀しい話で落語というよりも怪談に近い話なんですよ。


雪が降り続く大晦日の夜。

あるお寺では住職は部屋で寝酒を楽しみながら金勘定をしている。

若い三人のお坊さんが、除夜の鐘を撞かないといけないので、それまでお茶を飲みながらいろいろと話をしている。

そこへ、大店の伏見屋の若女将が訪ねて来て、借りていた提灯を返しに来たと言う。

そんなのいつでも良かったのにと言うと、若女将はどうしても年内に返したくて気になっていた、店の者に頼んだが忘れてしまったようなので返しに来たと言った。

若女将が帰った後で、三人のお坊さんの中の一番の兄弟子が若女将の身上について聞かせる。

伏見屋は大店で若旦那が若女将を見初めてどうしても結婚したいと望んだ。

しかし、若女将の家は貧乏で家格が違うからと姑を中心に反対されるが、若旦那がどうしてもと押し切って結婚する事になった。

こうして結婚したものの姑の嫁いじめは厳しくて、家柄が違うとか育ちが悪いとか、箸の上げ下げにまで難癖をつけるのだった。

それでも、まだ舅の大旦那がいる間はましだったが、大旦那が亡くなってからは姑の嫁いじめはますます激しくなる。

やがて若女将が懐妊し若夫婦の間に赤ちゃんが産まれて、これで嫁いじめもましになるかと周囲も思ったが、姑の嫁いじめは収まる事も無く「いつでも出て行け」とまで言われるほどだった。

そう話をしていると、お寺の鐘がゴーンと鳴った。

だれも撞いていないのに鐘がなったと若いお坊さんが騒ぐと、兄弟子がお寺にいるとそう言う事はよくある、檀家の人がだれか亡くなったのだろう正月明けには葬式になるだろうと言い、嘘だと思うなら鐘楼を見てみろ、雪の中に足跡が無いはずだと言う。

若いお坊さんが見てみると確かに鐘楼に足跡がない、そう思っていて気がつくと先ほど訪れた若女将の足跡もどこにも無いと騒ぎになった。

さては若女将が・・・と思っていると伏見屋のお店の者がやってきて、若女将が先ほど亡くなったと知らせに来た。

兄弟子が、先ほど若女将が来て提灯を返しに来たと告げると、店の者は若女将に提灯を返すように頼まれていて忘れていた、きっと気になっていたのだろうと語った。

若女将はいつもいつも姑にいじめられて店の者でも姑を殴ってやりたくなるほど可哀想だった。

ただ、このお寺へ行く事だけは止められなかったので、このお寺へ行くときだけが息抜きになって楽しみだったようだと語った。

それが、今夜になって若女将はとうとう堪えられなくなったのか首を吊って自害してしまった。

医者を呼んでも診させても亡くなっているので、もしも自害となると悪い噂が出たり取り調べになるので、何とか病死にするように医者に頼み込むのだった。

姑は亡くなった若女将の遺体に向かっても「よくもこんな真似をして店に傷をつけたな、でも、これでお前がいなくなったので新しい嫁を迎えられる」と毒づくのだった。

その時に、若女将の遺体を寝かせた布団の中がゴソゴソと動いたので姑は驚いて倒れたしまう。

周りの者が何だろうと若女将の布団を除けてみると、赤ちゃんが母を恋しがって布団の中へ入っていたのだった、それを見て回りの者はもらい泣きしてしまった。

店の者は、姑の嫁いじめは噂になるほど知られているし、若女将の事も医者に口止めしても多くの者が見ているので噂が広がるだろう、あの姑がいる限り、だれも嫁には来ないだろうと言った。

そして、もしも自分に娘がいても金持ちの家には嫁には行かせないと言うのだった。

釣鐘と提灯、吊り合わぬは不縁の基だと言うのだった。


しんみりとした良い話で、桂米朝さんの話芸が情感をかもしだすので、機会があれば聞いてみられたらとお勧めの落語です。