光圀伝
沖方丁さんの「光圀伝」を読了した。

光圀と言うと、あの水戸黄門こと徳川光圀の事である。

水戸藩の二代目藩主の徳川光圀が正式な名前で、黄門と言うのは中納言の中国風の呼び名で、水戸黄門は愛称という事になる。

光圀は水戸黄門のテレビや映画の姿は有名であるが、実際の光圀の生い立ちや生涯を知る人は少ないのではないだろうか?

物語は、老齢となり隠居している光圀が、自らが教育して現藩主の家老の職につけた紋太夫を能の合間に自らの手で暗殺する事からはじまる。

そして、どうして殺すことになったのかを伏線として、光圀の父との確執の幼少期、血気盛んな傾奇者として暴れる青年期。

そして水戸藩主となり学問や詩歌の魅力に憑かれ大日本史の編纂へと手を染めていく壮年期と光圀の人生を追いながら、様々な人物との出会いや係わり、そして別れを綴っている物語である。

本来は兄の頼重が継ぐはずの水戸藩世子の座を、兄を他家に出して自分が継ぐ事になった苦悩が光圀の生き方や思想に大きな陰を落としているのが興味深い。

かなりの分厚い本で長編であったが、今まであまり知らなかった光圀の姿も見れて面白い小説であった。

特に、光圀の兄の頼重の人柄が好きだし、また晩年の光圀を支えた左近との関係もすごく良いなぁ。