2024年05月の記事


明子ひとり ①
あの日、私が電車、地下鉄、バスに乗り換えて
青木家を訪問した時には、日がとっぷりと暮れていた。 

広いお屋敷にお邪魔する勇気もなく、
嫌々ながら来た為かもっと普通に来ればもっと早く着いたはず。

私が訪れた家は下町情緒あふれる大家族の暮らす家で、
門前まで来ても中々呼び鈴を押す事をためらって居た。

家の中には曾祖父母、祖父母、兄夫婦、二男、お手伝いさん達の住む
大家族だったから恥ずかしくて自分に自信がなかった。

その庭の後ろには社員寮が有り何十人か住んで居た。
聞いたお話では全員が独身男性との事。

私が思い切って玄関の呼び鈴を押すと祖母らしい方が出迎え、
笑顔で部屋を案内して頂いた。

あの資産家の家で過酷な運命が待っていようとは予想していたものの、
この時両親に捨てられた事を痛感する。 

あの時、実家に帰って居たら父は生きていなかった。
何故ならば負債を一人で返済する力がない事を知っていた。

だからと言って自分の人生を選べない私は情けない。
昭和50年代と言えば景気は良かった。

その会社で21年間、身を粉にして働き、
回りの人達にも悪い人等居ないと信じて、
気が付けば40代になっていた。

あの時両親を捨てゝ家出をしていたら、
今の自分は居ないと私はふと気付いた。

明子ひとりより。
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みどりの風
 春の朝風は清々しく冷んやりと吹く。
窓を開ければ寒い!思わず言葉が出てしまう。

暖かさに慣れた身体には朝の散歩は
ちょっと冷たくて川の水音さえ、
ざぶざぶと冷たい音に聞こえる。

日中は太陽が照り付け眩しく
うららかな五月晴れとなる。

「こんにちは!」近所の奥様が笑顔で挨拶、
私も大きな声で喜んで挨拶を返す。

今日は我が家と裏のお宅の隙間に
子雀が暫く鳴いて動かない。

主人が網ですくい廊下に置けば
歩くだけで飛べない赤ちゃんのようだ。

パンを細かく刻んであげれば
口を大きく開き食べてくれた。

とっても可愛いけれど休まずに鳴いている。
きっと親を探しているのかと思う。

水分を摂らせたくて、飲ませようと工夫しても
この雀には飲み方が分からない。

可愛そうで捨てる事等できない。
一日でも多く此処に住んで居ればいい。

飛べるようになったら自由に
仲間の所へ元気に飛んで行きなさい!

子を探す親、親を探す子の気持ちは
私には良く分かり同情する。

短夜は夜明けが速く寝不足続きになりやすい。
潮騒の 我が町晴れて 山笑ふ。sakura
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春の雨
昨日は両手、背中に荷物を背負い那覇空港に急いだ。
静岡行の搭乗時間が以前より、二時間早まり、

日差しの強い陽光の下、近所へ挨拶、自転車等を
室内に入れ、タクシーを呼び出し乗った。

GWの為か静岡行は混雑し、満席だったが、
静岡空港へ着けば快晴で風も程よく吹きホッとする。

表札から少し中へ入れば老朽化した我が家の
玄関がある。その間には春の野花が枯れていた。

その夜から雨が振り出し今日は大雨になる。
草取りも出来ずに午後5時30分に荷物を受け取り

使う場所だけお掃をすれば夕食、温かい物を選びたい。
カーテンを全部外し、青々とした庭が見えて嬉しい。

真っ赤に熟れたサクランボ、真っ青な小粒な琵琶、
枝にしがみ付いたままのオレンジ色の金柑、

様々な濃緑のなかで若葉が初々しい柿の木。
小さな小さな花が咲く前の粒が心成しか見える。

自然がいっぱいの町に来た!
明日、晴れたら忙しくなると思う。

皐月雨 花の咲くやう 牡丹かな sakura作
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