梅雨のゆくえ 
晴れる予報は外れ、じめじめ長雨が降っている。
ふーっとため息をつく。

山々の上に白い水蒸気のような雲が帯状に広がり、
何も霞んで見えない。

水辺で遊ぶ真っ白な白鷺さえも、
小雨にけむる町は緑一色で小さくぼやけて見えた。

私は、あくびをかみ殺して海沿いを歩いた。
ざざーっと白波に出会えば眠気も覚めて
心が引き締まる。

この梅雨は何時迄続くのかしら。
心まで水浸しになってしまいそう。

大洪水が怒り、心が崩壊しない内に私は心に移る風景を追う。
戻って来るかも知れない晴れやかだった心。

しかし期待はよく外れるもの。
だから期待なんてしては駄目なんだわ。

それでも水浸しになった自分を励まし、
私はただひたすらに歩いて行く。

もう二度と戻らぬ人生を少しでも生き甲斐のある物にしたい。
何の代償も求めずに人を愛したい。

この梅雨が北上しても南下しても精いっぱい自分の力で歩く。

鉛色の空に、「よろしくね。」と言ったら
雲間から、「こちらこそ。」と笑顔が返ってきた。