幼な友達
数十年ぶりで幼な友達に会った。
とても痩せて寂しそうな背中をして、彼は私に話しかけた。

「俺さ、小さい頃からさっちゃんと一緒になろうと思っていたんだ!」
「そうだったの。」二人は近所に住む同じ学年で仲良しの幼な友達だった。

小学生の頃、五人兄弟の将ちゃんの家は八畳一間の極貧の生活をし、
三男の将ちゃんは小五から新聞配達をして家計を助けていた。

歌が上手で運動会には将ちゃんと私はリレーの選手に選ばれたが、
将ちゃんの足の速さには叶わなかった。

家庭では、「素麺」が足りなくて伸びるのを待って食べる光景を見て、
私は、8才くらいの子供ながらに同情をし、何とかしてあげたいと思った。

あの頃の私の実家は商売も順調で景気も良かった。
両親に叱られる事が判っていたので、
そっとパンをポケットに隠して将ちゃんの家に持って行った。

将ちゃんの家が貧しくても兄弟が大きくなれば
必ず極貧生活から脱出して豊かな暮らしができると確信していた。

案の定、一人っ子の私の家は中学二年頃から父が事業に失敗をし、
将ちゃんの家は長男が会社員になり、時代の波にのっていった。

人の人生は良い時ばかりは続かない。
悪い時ばかりも続かないと、20才頃に思った事がある。

将ちゃんは努力をして会社社長になって生活も豊かになり、
13才位若い奥様と結婚したが子供に恵まれず、胃癌の手術を受けたとの事。

小学生の頃、将ちゃんの家族に自分のご飯を親に隠れて食べさせてあげた。
そういう色々な思い出を大切に思ってくれた将ちゃん、
早く元気になってお仕事に頑張ってと、励ませば元気に笑ってくれた。

幼な友達って何時まで経ってもいいものだと想いながら、
宿に帰って来た。