小学校一年生頃、下校途中に伯父の経営する桃畑が有った。
賑やかな表通りよりも裏通りから下校すれば、
桃畑や西瓜、メロン等が実った場所を通る方が楽しかった。

「お腹が空いたわね、桃を一個頂いちゃう。」友達と二人で
伯父の桃畑に入り、新聞紙で包んである桃を頂いた。

なんか悪い事をした感じがしたので、後で伯父に桃を頂いた事を
話すと、「少し位は食べてもいいよ。」言ってくれた。

少し位はという事はもぎ取ってはいけないと思い、
それから裏通りを下校しても果実を見るだけで帰る事にした。

青葉を付けた蔓(つる)がどんどん伸びて地面から顔を出すように
西瓜やメロンを見つける度に「一つ、二つ」と数えては
此処まで育てた伯父さん達は凄いと尊敬をした。

家の廊下には、農協に出せない形の悪い西瓜がごろごろ並び、
西瓜の好きな母は食事変わりに食べていた姿を思い出す。

特に中学時代は、生活が苦しかったので西瓜を頂くと助かった。
夏の食事は来る日も来る日も、母の手打ちうどんと茄子煮や
胡瓜もみを頂いていた。

母の身体が弱る頃は手打ちうどんも食べられず、オカズなしの
ご飯に梅干し、お醤油をかけたり、マヨネーズかけたりの中高時代だった。
お弁当の中身は、梅干しとふりかけだけで食べた日が多かったと思う。

今夏の桃は昨年より安く買えるので買物に行くと桃と西瓜を買い求め、
食後に食べる時、手に乗せてふと昔の桃畑を思い出す。